オーストラリアに移り住んでから、私の生活にいろいろな変化がありました。
料理もそのうちの一つです。日本とオーストラリアで入手できる食材の違いや、設備によるものなど様々ですが、私の個人的な意見から、日本で行っていた料理方法から変えたものもあります。
日本に住んでいた頃と比べて私の料理生活にどんな変化があったのか、思いつく限り、下記にご紹介したいと思います。
炊飯
オーストラリアに移住してからというもの、炊飯器というものを一度も所有したことがありません。
シェアハウスに住んでいた頃は、シェアハウスにあった炊飯器を自由に使えたため、炊飯器を使ってご飯を炊いたこともありましたが、一人暮らしを始めた後、炊飯器は購入しませんでした。
理由はと言えば、私が移住してきた頃にオーストラリアで売っていた炊飯器は、日本製のものに比べてかなり質が劣っていたのです。日本で炊飯器を購入してオーストラリアに持ち込む人もいたようですが、コンセントの形状が日本とオーストラリアでは異なるので、変換プラグを接続して使わなければなりません。
その上、オーストラリア流の食事を用意することが多くなったのでご飯を炊く機会が減りましたし、何しろ炊飯器がキッチンのスペースを取ります。
なので、炊飯はもっぱら鍋!
鍋を使っての炊飯に慣れるまで、たびたび失敗することもありましたが、今ではいちいち測らなくても、目分量でちょうどいい量の水を入れてご飯を炊くことができるようになりました。
炊き込みご飯やピラフなども、鍋で上手に作れています。
最近ではオーストラリアでも、日本のメーカーの高品質の炊飯器を購入することが可能なようですが、鍋でご飯を炊くことに慣れてしまったので、今後も炊飯器を買うことはないと思います。
卵
こちらでは、生卵は食べません。卵を食べるときは常時、加熱しています。というのも、オーストラリアでの卵の消毒処理方法が日本と異なるらしく、生の卵を食べると、サルモネラ菌からの食中毒にかかる危険性があるからです。
オーストラリアで初めて卵を買う時に驚くと思うのですが、日本で売っている卵に比べて、こちらで売られている卵は賞味期限が長いです。一か月くらいでしょうか?日本の卵の賞味期限は、だいたい一週間くらいと、短いですよね。
また、生産業者によるのかもしれませんが、鶏の産毛などが卵の殻についていることもあります。日本で買う卵は、表面がすごくきれいですよね。
余談ですが、オーストラリアでは、卵を買うときにパックを開けて、割れている卵やひびが入っている卵がないかを確認してからレジに向かう人が多いです。私も、今では習慣的にチェックしています。
オーストラリアの卵事情を知らず、昔、カルボナーラ・パスタを作った際に、生の卵の黄身を添えてしまったことがあるのですが、幸いおなかを壊しませんでした。
半熟卵の料理を出す家庭も多いですし、のんきオージー君は、今まで半熟の卵を食べておなかを壊したことはないと言うので、どの程度神経質になるべきなのかは意見が分かれるところですが、オーストラリアで、一切加熱されていない生の卵を食べることは避けた方がいいです。
今となっては卵かけご飯は、日本に帰った時にだけ味わえるぜいたく品になりました。
電子レンジ
日本で一人暮らしをしていた頃は、仕事と勉強で忙しかったこともあり、毎日のように使っていた電子レンジですが、今ではあまり使いません。
電子レンジの使用をためらうようになったきっかけは、十年ほど前にさかのぼります。
当時、ニュージーランド出身の女性と二人で家をシェアしていたのですが、健康志向の彼女は電子レンジの健康に与える影響に懸念を持っていて、電子レンジをシェアハウスに備えていませんでした。なので、料理を温める際は蒸し器やオーブンを使っていました。
電子レンジと比べるともちろん手間や時間はかかりますが、やってみると意外と簡単に料理を温めることができるものです。それに、レンジを使用すると、料理の一部が干からびていたり、熱が料理全体に均等に伝わっていなかったりして、温めた後の料理がおいしく感じられないことがあります。
レンジを使わなくても料理を温められることを知ってから、特別急いでいる場合や手抜きをしたい場合を除いて、料理を温める時は電子レンジではなく、オーブンなどを使うようになりました。
オーブン
日本ではオーブンがついている場所に住んだことはありませんでしたが、こちらでは大半の住居にオーブンが設置してあります。
現在住んでいるアパートのオーブンですと、解凍、グリル、オーブン、ファン調理オーブン(オーブン内でファンが回転して、調理中にオーブンの中の温度を均等に保ってくれる)と、機能が豊富です!
オーブンがあると、料理のレパートリーの幅が広がります。
特に重宝しているのが、手作りのロール・ブレッドやパイなどを焼く時です。
また、使用頻度が低いわりにかさばって邪魔なのでトースターを手放したのですが、オーブンのグリル機能を使って、なんら問題なくパンをトーストできています。
今ではオーブンのない生活は考えられません。いずれ日本に永久帰国を決めたとしたら、その時はぜひオーブンがある家に住みたいと思っています。
バーベキュー
こちらでは、ほとんどの家庭がバーベキューの機械を持っているのではないでしょうか。
アパートのバルコニーを覗けば、たいていバーベキューの機械が置いてありますし、休日などは民家の庭から、美味しそうなバーベキューのにおいが漂ってきます。
以前住んでいたアパートの隣人は、キッチンにオーブンやコンロがあるにも関わらず、頻繁にバルコニーのバーベキューで料理をしていました。週に一度は見かけたと思います。
電化製品店では、けっこう広いエリアをバーベキューの機械の展示に割いていますし、バーベキューの専門店を街で見かけることもよくあります。
私たちも、なんの変哲もない普通の日に、「バーベキューで料理したほうが、お肉がスモーキーかつジューシーに焼けて美味しいから。」という理由で、バーベキューを使って料理することがあります。
日本ではキャンプなど、特別な時だけ利用する印象のバーベキューですが、オーストラリアではそれだけ多くの人の生活の一部になっています。
薄切り肉
日本ではスーパーで簡単に買える薄切り肉ですが、オーストラリアでは滅多に見かけません。薄切り肉を扱っているのは、アジア食材店くらいのものです。なので、薄切り肉を使用する料理はめったに作れていないというのが現状です。
以前、無性に牛丼を食べたくなった時には、わざわざ遠くのアジア食材店まで、値段の高い牛の薄切り肉を買いに行って作りました。シドニーで牛丼屋や牛丼を食べられるレストランには、お目にかかったことがありません。
日本で一人暮らしをしていた頃は、簡単に作れて栄養もとれる鍋料理を頻繁に作っていましたが、こちらもシドニーに越してきてから、薄切り肉が手に入りにくいという理由で、まったくと言っていいほど作らなくなってしまいました。
買ってきた肉を自宅でスライスする人もいるようですが、スライスする機械に投資した上に、わざわざ肉を薄切りにするために自分で作業する気力はありません。
ようやく薄切り肉を食するアジアの風習が浸透してきたのか、つい最近になって薄切り肉を販売するスーパーもちらほら出てきたようですが、まだまだ稀ですし、売られている薄切り肉の種類も少ないようです。
オーストラリアで薄切り肉が容易に手に入るようになる日を待ち望んでいます。
代用・手作り
オーストラリアに移住してから、日本独特の食材を別のもので代用したり、材料を配合して作ったりすることが増えました。一般的なスーパーでは購入できなかったり、値段が高かったりするからです。
例えば、日本食を作る際によく使われる料理酒はスーパーやアジア食材店などでも手に入りますが、やはり少し値段が高いです。一応常備してはありますが、コストがかかるので、たいていの場合は白ワインで代用しています。オーストラリアのワインは安くても味のいいものが多いので、じゃぶじゃぶ使えます。
それと、うちののんきオージー君も好きなお好み焼きですが、長芋なんて、オーストラリアで見かけたことがありません。なので、代わりにジャガイモをすりおろしたものを入れています。けっこう美味しいお好み焼きが焼けます。
めんつゆや冷やし中華のたれなどは、手作りしました。
手間がかかりましたが、日本では何の疑問もなく購入していたものを自分の手で作れたことに、達成感を覚えました。
クリームシチューにいたっては、たとえスーパーでルーを買える状況だとしても、今後も自分でルーを手作りしていくつもりです。
ちなみにお好み焼きソースはまだレシピを発見できておらず、どうやってあの味を再現するのかわからないので、値段ははりますが、仕方なくアジアンスーパーでお好み焼きソースを買ってきています。
高いお金を払ってでも購入する以外に手段がない材料があるのは、仕方ないとあきらめています。
シーフード
魚介類をめぐる食生活も、だいぶ変わりました。
まず、干物や粕漬けなどは売っていないので、まったく食べていません。刺身もめったに売っていないので、生の魚を食べる機会と言えば、寿司屋でお寿司を買ってきた時か、レストランに行った時くらいです。
また、アサリやシジミのお味噌汁も料理できないですね。日本では手軽に買えるこれらの貝類ですが、魚屋やスーパーで見かけたことがないです。カキやムール貝、ホタテなどの、限られた食材は手に入ります。
魚屋で購入してきて料理するのは、基本的に切り身の魚ですが、お店によっては切り身の他に、魚を一尾丸ごと買える場所もあります。店員さんに頼めば、内臓やうろこの処理をしてくれたりします。
しかし、日本では簡単に手に入る魚も、こちらでは見かけないことがあります。時おり食べたくなるサンマですが、一度も魚屋で見かけたことがありません。そういえば十年以上、サンマを口にしていません。
ホッケの開き、アジフライ、するめいか、白子ポン酢、明太子…
日本ではバラエティ豊かで美味しい海鮮料理が、日常的に食べられますね。オーストラリアも海に囲まれていますが、日本でのシーフードの選択肢の広さにはかないません。
同じ先進国とはいえ、料理一つとっても、日本とオーストラリアではたくさん違いがあります。その違いを楽しめるかは、移住した本人の気持ちの持ちようなのかなと思っています。
シドニーでは食べられない日本食が異様に恋しくなる日もありますが、またの一時帰国の時に、日本で美味しいものを食べてくるのを楽しみに待とうと思います!