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グラニー・フラットでの生活

今日は、私が以前、一年間住んだシドニーのグラニー・フラット(”Granny flat”)について書こうと思います。

英語で”Granny”とはおばあちゃん、”Flat”とはアパートを意味します。

え、おばあちゃんの家に住むの!?それとも、おばあちゃんしか住めない家??

と、誤解を招きそうですが、簡単に説明すると、グラニー・フラットは、母屋と同じ敷地内に母屋とは独立して建てられた「離れ」を指します。

引き続き家族と暮らしたいけれど、よりプライバシーが守られる環境に身を置きたい家族のメンバー(おじいちゃん、おばあちゃんや、思春期を迎えた子供など)が、同じ屋根の下ではないにせよ、家族と同じ敷地内で暮らせる利点があるため生み出されたシステムのようなのですが、オーストラリアではグラニー・フラットだけを他人に賃貸するケースも多くあります。

十年ほど前、シェアハウスを離れて一人暮らしを始めた私ですが、一軒目に住んだアパートはとても古く、ゴキブリがたくさん出たのです!そこで、もっときれいな場所に引っ越しをしようと、アパートの6か月間の賃貸契約が切れる少し前に、部屋探しを始めました。

部屋探しをはじめて間もなく見つけたのが、坂の上にある、こぢんまりとしたかわいらしいグラニー・フラットでした。

1リビングルーム、1ベッドルームの平屋建てで、小さいキッチンとシャワー、トイレ、洗濯機置き場がありました。オーストラリアでは珍しくないのですが、バスタブはありませんでした。最大の特典と言えば、専用に使える庭がついていたことです。

母屋とは敷地が柵や扉で区切られており、共有部分と言えば、母屋とグラニー・フラット共通の出入り口である門から、母屋の裏手にあるグラニー・フラットまでの通路くらいのものでした。

契約前の内見には、カップルや小さい子供連れの家族なども来ていました。けれど、複数名で住むには狭いのではないかな?というのが、私の印象でした。

白塗りの外壁やタイル貼りで清潔感のある室内、一人暮らしにはもったいないくらいの広々とした庭が気に入って、ぜひ住んでみたい!と思い賃貸契約の申し込みをすると、すんなり審査が通り、そのグラニー・フラットに住めることになったのです!

寝室の窓は、庭に面していました。
寝室にあった洋服ダンス
車一台停められそうな広さの庭でした。
フラットの入口手前に、ちょっとした芝生がありました。

実際に住み始めてみると、アパートでの生活とはまた違った楽しみや苦労がありました。

私がこのグラニー・フラットに住んでいた頃に感じた、グラニー・フラットでの生活の長所と短所を下記にご紹介します。

長所

プライバシー

母屋とは高い柵で区切られており、母屋からグラニー・フラットの中は見えない造りになっていたため、プライバシーが守られていました。アパートのように、隣のユニットや上の階の人の物音が気になるということもありません。

反対に、私がグラニー・フラット出入りの際に、母屋の庭やガレージ横を通り抜けなければならなかったので、母屋に住んでいる人たちのほうが、プライバシーを気にしなければならない立場だったかもしれません。

グラニー・フラットによっては、庭を母屋の人たちと共有するケースもあるみたいですが、私が住んだグラニー・フラットには専用の庭がありました。

そこで、ガーデニングを楽しんだり、のんきオージー君が日曜大工をやったりできました。十分な広さがあったので、ちょっとしたガーデン・パーティもできたと思います。

洗濯物干しも庭の柵に備え付けてあり、隣人に遠慮する必要なく、私専用に使えてよかったです。オーストラリアでは、アパートに住んでいたとしたらたいてい、敷地に備わっている洗濯物干しは他のユニットの人たちと共用することになるからです。

グラニー・フラットと一口に言っても様々なので、私のように庭を自由に使えたケースは珍しいのかもしれませんが、庭のある生活を楽しめたのはグラニー・フラットの醍醐味だと思っています。

セキュリティ

グラニー・フラットの敷地に入るには、母屋と共用の門を通り、母屋の横の狭い通路を抜けて、もう一つ、グラニー・フラットへ通じる木戸を抜けないとなりません。それ以外の方法と言えば、隣家との境に立っている高めの柵を乗り越えるしかないので、比較的安全だったと思います。

母屋に住んでいる方たちとも良好な関係を保っていたので、万一、不審な人を見かけたとしても、お互いに注意し合える状況でした。

通勤に利用していた自転車も、見知らぬ人が入り込むことのない、母屋裏のグラニー・フラットの敷地内に停めることができたので、盗まれる心配がなく便利でした。

シンプルで静かな生活

こぢんまりとした造りであるにもかかわらず、生活に必要最低限の機能は備わっているので、シンプルな生活をしたい人にはもってこいだと思います。

ミニマリスト、周囲の住居から独立した静かな環境で暮らしたい人、短期滞在者のため、もともと荷物が少ない人などに向いているのではないでしょうか?

個人的には、置き場のない荷物が増えるのを抑えるため、無駄な買い物を控えられたのがよかったです。

短所

庭のメンテナンス

住んでみるまで思いもよらなかったのですが、庭の手入れが、かなり重労働でした。

庭には2畳ほどの広さの芝生があり、母屋とは反対側の、グラニー・フラットの裏手には、庭木や柵にまきついているつる科の植物がありました。

まず、芝生がけっこうな早さで育ちます。春や夏は、二週間もすると、靴が埋もれてしまうくらいの丈まで草がのびてきます。

それに、庭木や柵にまきついているつる科の植物も、ほうっておくと、ぐんぐん縦横にボリュームがでてきます。

庭の手入れは住人の責任だったため、大きめの剪定ハサミを買ってきて、のびた木の枝や芝生を刈っていたのですが、作業を終えるまでに一日費やすこともありました。芝刈りを一度、外部の人にお金を払って依頼したこともありましたが、頻繁にお願いするとなると、けっこうな出費です。

庭付きのグラニー・フラットに住む予定の方は、この点を十分考慮に入れたうえで検討されるのをお勧めします。

収納

私が住んでいたグラニー・フラットには、クローゼットはなく、収納と言えば、ベッドルームに置かれていた木製のタンスと、台所にある戸棚類だけでした。

服がタンスに入りきらないばかりか、その他の持ち物も置き場所がないので、大きめのプラスチックの箱を何個か買ってきて荷物を入れ、ベッドルームの壁沿いに置いていたのですが、スペースを取られて窮屈でした。

クローゼットなどの造りつけの収納が充実しているグラニー・フラットは、あまりないのではないかと思います。内見の際の、必須チェック項目ですね。

家の出入り

私の住んでいたグラニー・フラットに入るには、母屋との共通の門をくぐった後、母屋の庭を横切り、ガレージの脇を抜け、母屋の壁に沿った狭い通路を通り、もう一つ木戸を越えないとなりません。

ということは、母屋に住んでいる人たちに遠慮しないとならないこともありますし、グラニー・フラットの場所がわかりにくいという欠点があります。

デリバリーを頼むときは、毎回、細かくグラニー・フラットの位置を説明する必要がありました。

ちなみに住所は、母屋の住所は番号の後に”A”がついており、私の住んでいたグラニー・フラットの住所には”B”がついていて、郵便受けも”A”、”B”と、それぞれ分かれていました。

建物のクオリティ

大雨が続いた後に、キッチンの床から浸水があり、あふれ出して寝室のほうにまで水が入り込んでしまうという事態がありました。また、内見の際にはわからなかったのですが、リビングの床が微妙に傾斜していました。

キッチンにオーブンがなかったのも、時おり不便でした。

グラニー・フラットがクオリティの低い建物とは一概には言い難いですが、やはり母屋に追加して建てられたものなので、正式な住居に比べると造りが甘いのかなと、当時感じました。

グラニー・フラットを貸し出していたオーナーの個人的な理由で、結局、そのグラニー・フラットには一年間しか住みませんでした。

おそらく、私が今後またグラニー・フラットに住むことはないと思うのですが、その頃の日々は楽しい思い出として残っています。

私の経験はただの一例ですが、これからオーストラリアでグラニー・フラットに住むことを検討している方の、ちょっとした参考となれば嬉しいです。