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ハンター・バレーで気球に乗ってみた

就職先が決まって長~い無職生活から抜け出したものの、入社翌日より異常な業務量に追われ続け、ブログの更新が5か月も遅れてしまいました。

仕事についてのお話しはまたの機会にさせていただくとして、今回はそんな多忙な日々の合間を縫って強行した『熱気球体験』について書こうと思います。

もう遠い昔のことのようですが、2024年7月28日の日曜日、のんきオージー君と二人で、冬の真っただ中のハンター・バレー(”Hunter Valley”)を訪れました。ハンター・バレーと聞けば、ワイナリー(”Winery”)で有名ですね。実は、熱気球体験ができる場所としても人気です。

雪など降りませんし、一年を通して気温差が少なく温暖な気候のシドニーですが、冬はそれでも、それなりに気温が下がります。

その上、早朝かつ上空という条件で疑いようもなく寒いだろうという時期になぜ熱気球乗りを決めたかというと、実は再挑戦だったのです。

転職先での勤務が始まる直前の今年5月末、あるきっかけでハンター・バレーへ2泊3日の小旅中に行くこととなりました。せっかくの機会なので、滞在中に気球に乗ろう!と意気込んでチケットを購入したのですが、天候不順により飛行が中止となってしまったのです。

熱気球熱の冷める前(紛らわしい言い回し…)の1~2か月以内、かつ、シフト勤務ののんきオージー君と私の都合の合う日が7月28日だったわけです。払い戻しは考えていませんでした。

ちなみに、払い戻しや再予約はほとんどのチケットで効くようですが、詳しくは熱気球体験サービスを提供している会社のウェブサイトで、チケット購入前に確認されることをお勧めします。

当日、起床は夜中の2時。

上空から日の出を堪能できるようにスケジュールが設定されているため、集合時間は朝の5時となっていました。車での移動時間を考えると、午前2時半にはシドニー北部郊外の自宅を出発しなくてはなりません。

早めに就寝したものの、通常の睡眠時間を満たすことはできず、また、前日の土曜日も働いていたため疲れていたのですが、アドレナリンのせいか、2時きっかりにばちっ!と目が覚めました。

準備と言えば、暖かくて動きやすい服に着替え、ドライブ中に飲む水を水筒につめ、上着を車に持ち込むくらいです。

私はTシャツにトレーナー、ジーンズ、足元はスニーカー、そしてダウンジャケットという服装でしたが、防水の靴が推奨されていた理由は、気球を降りた後にわかりました。サングラスと手袋も持って行ってよかったです。

お世話になったのは、『バルーン・アロフト』(”Balloon Aloft”)という、熱気球飛行体験サービスを専門的に扱っている会社です。

説明によると、こちらの会社はオーストラリアで最大の熱気球を扱っているとのことでした。国内数か所で営業しているようですが、ウェブサイトから判断する限り、やはりハンター・バレーでの営業規模が一番大きいようです。

各旅行会社からも、シドニー中心部~ハンター・バレー間の送迎サービス込みの熱気球体験ツアーなどが販売されているようですね。

Balloon Aloft
Balloon Aloft - Hot Air Balloon Rides & Experiences Australia’s best hot air balloon rides for 40+ years. NSW Tourism Awards Gold Winning sunrise hot air ballooning and gourmet breakfast - discover more!

集合場所のピーターソン・ハウス(”Peterson’s House”)には余裕を持って着きました。こちらは5月の小旅行でも訪れたのですが、周囲ののどかな風景はもとより、レストラン内の雰囲気も素敵なワイナリーです。

駐車場に近づくと、暗闇の中、スタッフの方々が懐中電灯を片手に、車の誘導をしたり、駐車場から集合場所までの経路に立って道案内をしたりしながら、私たちを出迎えてくれました。

前回訪れたレストランへの道すがら見かけた、パーティ用と思われる、白く簡素な建物へと案内されます。

入口で名前を言うと、よく小学校で先生が使っていたような丸いシールを渡されました。どの気球に乗り込むかのグループ分け用らしく、上着の胸の部分にそのシールを貼るように言われました。

Peterson House
Peterson House Hunter Valley Wineries Pokolbin Peterson House is one of the best vineyards in the Hunter Valley. Located at Pokolbin, the gateway of the Hunter Valley, the picturesque property is home to the...

建物内には白いテーブルクロスをかけられたテーブルがずらっと4列ほど並び、そして、その前に椅子が無造作に置かれています。

壁はプレハブっぽいのですが、テントのような作りの屋根からはシャンデリアがぶら下がっていました。

少し離れたテーブルの前の椅子に腰を下ろし観察していると、続々と人々が同じ建物に入ってきます。

中国からの団体旅行客と思われる人々はある一つのグループに集められ、他の、友人・家族・カップルなどの参加者はそれ以外のグループに振り分けられるといった具合でした。どうやら合計で4~5グループに分けられているようです。ゆうに100人を超える人数です。

私たちは近くの椅子に座った年配の夫婦と話したり、トイレに行ったりして出発の時間がくるのを待ちました。

時間を持て余し始めた頃、ようやくスタッフの方から簡単な説明があり、出発することとなりました。気球が待っている野原まで私たちを連れて行ってくれる送迎バスに、グループごとに順番に乗り込みます。

バスは、大きめのミニバス、といったサイズで、内部は狭く、腰を屈めながらでないと歩けませんし、シートも窮屈です。しかし、現地までは30分ほどの、あまり右左折のない平坦な道のりで車の揺れが少なく、移動はそれほど不快ではありませんでした。うとうとしている間に目的地に到着しました。

ポケットに入る程度の小型の持ち物以外は車内に置いていくように!との指示がありました。急いで水を飲んで喉を潤し、携帯電話とサングラスを手にバスを降りると、私たちが乗る気球が目の前の地面に平たく横たわっていました。周りを見渡すと、他にも色とりどりの気球があちらこちらに広げてあります。

そして、空が少しずつ白み始めた頃に気づいたのですが、そこかしこにけっこうな大きさの牛の落し物がありました。

スタッフと、グループの中からサポートとして選ばれた男性が気球を膨らませている間、残りのメンバーは遠目から見守ります。

強力な扇風機を駆使して、熱風を気球の中に送り込んでいきます。どんどん膨らんでいく気球を見ていると、こちらのテンションもあがっていきます。

気球が十分に膨らみ、私たちの乗り込むかごが起き上がったところで、スタッフの方から、かごへの乗り降りと、着地時の態勢について説明がありました。

そして、いよいよ搭乗です!

スタッフの方が踏み台を用意してくれていましたが、基本的にはよじ登ってかごに入ります。恰好など気にしている場合ではありません。かごの内側と外側、ところどころに太めのロープでできた持ち手のようなものがあるので、そこに足をかけたりしてなんとかはい上がりました。

かごの中に降り立ってまず思ったのは、狭い!ということ。

気球のかごというのは、中を比較的自由に歩き回れるものだと想像していたのですが、一人分のスペースを確保するだけで精一杯です。

かごは内部が5か所に区切られていて、真ん中の部分が、パイロットの方と、気球に熱風を送り続けるためのガスが入ったタンク用、他の4か所がツアー客用となっています。

それぞれの仕切りの中に6人ほどが乗り込みます。体の向きをかえるだけでも一苦労です。

のんきオージー君と私は、かごに真っ先に乗り込み、中心部に近い、パイロットの方の真横の場所に陣取ることができたので、飛行中、彼の作業を見ることができました。

全員が乗り込んだところで、パイロットの方より指示があり、かごに乗り込む前に説明を受けた着陸態勢を、かごの中でリハーサルすることになりました。

かごの一方の壁に一列になって寄りかかり、反対側の壁に埋め込まれているロープを両手でつかんで一斉に空気椅子のポジションを取ります。隣の人との接触を恥ずかしがっている場合ではありません。肩や腰骨を左右の人と一緒にぎゅうぎゅうに押し込まないと、とうてい取れない体勢です。

そして、パイロットの方からオーケーが出たところで、とうとう飛び立つ瞬間が訪れました。

離陸は、これまでに体験したことのない、不思議な感覚でした。振動がまったく感じられないのに、静寂の中、視界がふわ~っと浮き上がっていきます。

そして、意外と早いのです。感動している間にどんどん地面が遠ざかっていきます。気づくと、すでに地上数十メートルの空中を漂っていました。

私たちの気球が一番初めに飛び立ったのですが、他のグループの気球もぞくぞくと宙に浮いていきます。

幸運なことに、私たちの気球のパイロットの方は、他の気球たちよりも高度を上げ、小高い山の上を通過したり、他の気球の動きが滞ってしまっている谷間を避けたりして、その日最適のコースを選んでくれているように感じられました。

そして、冷たく澄みきった空気の中、遠くの丘の背後から姿を現した太陽の光に体を包まれていく過程は、神秘的、かつすがすがしいものでした。

太陽がすっかり姿をあらわした後も飛行は続きます。

パイロットの方の言葉にしたがって地上を注意深く観察すると、言われたとおり、カンガルーたちが軽快に飛び跳ねていく姿があちらこちらにありました。放牧されている牛たちも、群れになってゆっくり歩いています。

私たちの気球の後をすべるようについてくるカラフルな気球たちを見ているのも、一興です。

パイロットの方が時おり、地形や気球の説明をしてくれます。他の気球体験サービス会社が地上で飛行の準備をしている様子も、空中から眺めることができました。

飛行時間は1時間ほどだったでしょうか?けっこうな距離を移動しています。

丘に沿って高度を下げ、後から追ってくる気球たちが見えなくなった頃、着地することとなりました。

離陸前に説明を受けた態勢を全員で取ります。そして、足元に強い衝撃を感じた後、かごの動きが止まりました。空を見上げる角度で傾いた姿勢のまま数十秒間、全員で固まっていたと思います。

パイロットの方が気球を操ってかごを起こしてくれ、私たちは順々にかごから降りることになりました。

乗る時には踏み台が用意されていたのですが、降りる時にはそんなものはなく、どこに足をかけたらいいものか戸惑ってまごついていたら、先に降りていた男性が手を貸してくれました。

気球が着陸した草地は、比較的乾燥していた離陸場所とは違い地面がぬかるんでいて、ぼうっとしていると枯草や泥に足をとられます。風向きや風の強さによるのでしょう。パイロットの方が想定していた場所より、少し離れた場所に着地してしまったようでした。

迎えのミニバスの到着を待つことになるのですが、この間、みんなで気球をたたむお手伝いをします。

風船部分だけで縦の長さは25メートルほどあったでしょうか?まだ中に空気が残っているために膨張している風船部分を、底の方からみんなで一列に並んで靴で踏みつぶしながら空気を抜いていきます。頂上部分に達し、気球がだいぶしぼんだところで、今度は両脇から真ん中部分へと、他の方々と協力して細長く丸めていきました。

作業中も、丘の上を見渡すと、4~5頭ほどの小さい群れをなしたカンガルーたちが、いろんな方角から姿を見せてくれます。

私たちのグループはチームワークがよく、効率的に作業を終えることができました。後から近くに降りてきた気球では、作業をまったく手伝わず、写真を取ったり談笑したりしている人だらけで、パイロットの方がかわいそうでした。

この後、けっこうな距離をミニバス目指して歩くこととなりました。地面の状態が悪すぎてタイヤがぬかるみにはまってしまうため、ミニバスが私たちの着陸した地点まで近寄ることができなかったのです。

泥や水たまり、そして、牛の糞を避けるため、なるべく足場のよい箇所を選びながら歩いていきます。時には水たまりを飛び越えたり、背の高い雑草をまたいだりしながらです。あまり慎重にゆっくり歩を進めていると、泥水が浸透してきてスニーカーが湿ってきます。

気球に乗りに来て、まさか最悪なコンディションの野原を歩くことになるとは想定していませんでした。30分は歩いたと思います。ミニガスにたどり着いた頃、靴はすっかり泥にまみれていました。ジーンズの裾の部分にも、乾きはじめた土や枯れ草が付着しています。汚れても後悔しない、履き古したスニーカーを履いていってよかったです。

早朝起床から時間が経っている上にウォーキングをして、いい具合におなかがすいています。

行きに乗ってきたのと同じミニバスで集合場所のピーターソン・ハウスまで戻ります。ミニバスを降りると、そのままレストランへと案内されました。熱気球体験とセットになっている朝食をとるためです。

熱気球体験を予約した際に朝食のメニューを選ぶことになっていたのですが、私たちは3種類あった選択肢の中からエッグ・ベネディクト(”Egg Benedict”)を選んでいました。

エッグ・ベネディクトとは、イングリッシュ・マフィンやトーストしたパンの上に、半熟卵、ベーコン、ソーセージなどをのせ、オランデーズソース(”Hollandaise Sauce”、卵黄をレモン、酢などで混ぜた、マヨネーズっぽいソース)をかけたものです。

ピーターソン・ハウスのエッグ・ベネディクトにはメキシカン料理風の煮豆がのっており、一般的なエッグ・ベネディクトとは少し変わった風味でおいしかったです。

食事を終え一息ついた頃、私たちの乗った気球を操縦してくれていたパイロットの方が各テーブルをまわり、飛行中に取った写真を、私たちの携帯へそれぞれ送ってくれました。気球が飛び立つ際には地上に残っていたスタッフの方が、飛行中はパイロットの方が気球に器用に設置されていたカメラから、数枚、写真を撮ってくれていたのです。遠目ですが、それぞれの乗客の顔が確認できる距離です。

その後しばらく、ピーターソン・ハウスのスパークリング・ワインを飲みながら、同じテーブルに座った人たちと談笑して、楽しいひと時を過ごしました。隣に座った男性二人組は、もう一泊ハンター・バレーに滞在するとのことです。うらやましい!

この日提供されたスパークリング・ワインは、5月にこちらでワイン・テイスティングに参加した時に出されたものと同じものでした。その日試飲した数種類のワインの中、しつこくない甘さが気に入り、ボトルを買って自宅に持ち帰ったものです。

ツアー参加者の大半はまだレストランに残りワインを楽しんでいましたが、翌日仕事がある私たちはタイミングを見て帰途につくことにしました。

日曜日の朝、世の中にはまだベッドでまどろんでいる人たちもいる時間帯です。

天気も良く、このまま帰るだけではもったいないとも思ったのですが、よく考えてみれば起きてから7時間以上経っています。レプタイル・パーク(”Australian Reptile Park”、爬虫類の動物園)に寄ってから帰る案も出たのですが、やはり思い直し、まっすぐ帰ることにしました。

自宅についたのは、まだ日も高い日曜日の昼下がりでした。思いのほか疲れていた私たちは、気球の写真を見たりして先ほどまでの熱気球体験の余韻に浸りながら、のんびりソファの上で残りの週末を過ごしました。

他の乗り物ではなかなか味わえない、全てが停止しているのと同時に、自分の体は移動しているという感覚。

360度視界がひらけている中で浴びる朝日。

眼下に広がる緑と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら遠ざかっていくカンガルーたち。

ひんやりと、純度の高さを感じさせる上空の空気。

また一つ、記憶に深く残る体験ができました。

皆さんも機会がありましたら、熱気球飛行、ぜひとも挑戦してみてください!言葉に表しづらい感動が待っていると思います。

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