タウニー・フロッグマウス(”Tawny Frogmouth” 日本名:オーストラリア・ガマグチヨタカ)という鳥をご存じですか?
オーストラリアの動物としてはあまり知られていませんが、他の大陸では見ることのできない、珍しい鳥です。見た目からフクロウと間違われることが多々ありますが、夜鷹の一種です。
実は私も、オーストラリアに移住して10年以上経つというのに、つい先日まで存在を知りませんでした。
ところが、下記のブログをちょうど書いている時に、偶然、私たちの住んでいるアパートのすぐ外にいるところを発見したのです。
私の机はアパートの裏手にあるバルコニーへ通じる窓に面していて、ふと顔をあげれば、隣接するアパートとの間に、目隠しのように立っている木々が目に入ります。
その日、パソコンに向かって作業している最中に、ちょうど目線の高さの枝の間で、なにかふさふさしたものがゴソゴソと動いているのを、目の隅にとらえたのです。
不思議に思って作業を中断し、バルコニーに出てしばらく眺めていました。すると、茂みから出てきて、全身を見せてくれたのは、フクロウのような鳥でした。ころころと表情が変わります。不機嫌そうだったり、とぼけ顔だったり。体長は40センチほどだったと思います。
観察すればするほど興味深いこの鳥。もっと知りたくなって、すぐにググりました。
インターネットで集めた情報によると、オーストラリアのほぼ全域に生息している夜行性の鳥で、日中は身を守るために木の枝にカモフラージュするとのことでした。昆虫やカタツムリ、時に小さい哺乳類やカエルなどを食べます。フクロウと違って足で獲物を捕らえることはなく、口で捕らえて丸のみにするそうです。なので、花にみせかけて昆虫たちをおびき寄せるために、くちばしの中は黄色です。夜になると、光に集まる昆虫たち目当てに、街灯の上にとまっていたりします。
寿命は14年ほどで、一度カップルになると、片方が死ぬまでともに行動するそうです。
人間のいる環境にも順応しているものの、擬態が上手なため見つけることが難しいと言われているのですが、たまたまバルコニーの外にいるところを発見できた私は、すごくラッキーでした。
以来、このユニークな鳥に会いたくてたまらず、古い木を見かけるたびに、見上げながら歩いているのですが、なんと、すぐ近所の木に最近住みついているではありませんか。しかも、つがいで。
左の写真に、2羽のタウニー・フロッグマウスが写っています。
この木は古く大きくて枝も多いため、カモフラージュしやすそうなので、このカップルが気に入っているのも納得がいきます。
見つけるのが、宝探しみたいで楽しい!
それから毎日、「まだいるかな?」と確認をしに行っています。
発見してから二週間ほど経ちますが、今のところ、とまっている枝は日によって変われども、2羽とも毎日同じ木にとまっています。
日中は同じ枝の上で、じーーーーーーっとしています。
向こうもこちらを観察しているのか、カメラ目線の写真が撮れたりします。
この日の朝は小雨が降っていて少し肌寒かったのですが、温めあっていたのか、寄り添って同じ枝にとまっていました。私が所用を済ませて帰ってくると、今度は同じ方向を向いて、まるで太陽を拝んでいるような姿勢になっていました。
左はカモフラージュの最中の写真です。
目を閉じ、あごをあげて体を細くして枝に見せかけ、静止しています。
身を守る手段だとわかっていても、どうしてもこの姿が滑稽で笑ってしまいます。
先日は3羽目のタウニー・フロッグマウスも同じ木にとまっていました。パートナーらしき鳥は見あたらなかったので、その鳥はおそらく、まだシングルですね。
毎日、デジタルカメラを片手に、木の枝を見上げているちょっと変な人になっている私ですが、時々、道を行きかう人が、「何かいるの?」と声をかけてきます。タウニー・フロッグマウスがこの木にとまっているんだよ、と教えてあげると、「クール!」と感動する人もいれば、オーストラリア人でも「え?どんな鳥?」と、タウニー・フロッグマウスを知らない人もいます。
ほとんどの人は気づかずに通り過ぎていくだけなので、こんなに面白い鳥がすぐそこにいるのに、もったいない!と思ってしまいます。のんきオージー君も、「今日も二羽ともいたよ!」と仕事の行き帰りに彼らの居場所を確認しているらしく、嬉しそうです。ただ、私がこの鳥の虜になっているのがよほどおかしいらしく、私がこのブログの最終仕上げをしている最中に、私に向かって、タウニー・フロッグマウスならぬ、「タウニー・ブログマウス!あははは!」と叫んできましたが。
タウニー・フロッグマウスの繁殖期は8月から12月の間とのことです。巣作りがとても下手くそというのも、ひな鳥が、まるで綿ぼこりに目とくちばしをつけただけのような適当な姿なのも、コミカルで笑えてしまいます。実際に巣やひな鳥を見てみたいので、このまま近所の木で子育てをしてくれたらいいなあ、と思っています。
日本やアメリカなどの動物園でも飼っているところがあるそうです。オーストラリアで見るチャンスのない方は、もしタウニー・フロッグマウスのいる動物園に行く機会があったら、彼らの檻を覗いてみてください。かわいく面白い姿に癒されると思います。